ヘアサロン倒産、過去最多の衝撃 ~美容師のゆくえ~

帝国データバンクの調査によれば、2025年1月から8月までのヘアサロンの倒産件数は157件、3年連続の増加だという。倒産の背景の一つは競争の激化にある。例えば私が利用するJR兵庫駅は、ひなびた駅とまでは言えないが、地域住民が利用する、ひっそりとした落ち着いた駅だが、その界隈には約30軒以上のヘアサロンがある(MapFan)。「いたるところに存在する」といってよく、コンビニや歯科クリニックなどの比ではない。競合の激化に加えて、材料費やテナント料金のコスト高がある。そして何といっても「美容師不足」が大きな問題にあるようだ。

それはなぜか。

技術と人気があれば独立する美容師が多いからだと言える。サロンに長く止まらないため、店舗に人材が残りにくい。独立した美容師もまた店舗を構えるが、フリーランスの域を脱することができない課題を抱えている。既存店も新規店も、既存スタッフの流出が加速しているのだ。それは低賃金と長時間労働が背景にあり、店舗は従来通りのサービスを維持できないケースが出てくる。

美容師の多くは、先輩の厳しい指導によって育成されてきたと思う。従って自主的な居残り練習は当たり前の時代であったことが、働き方改革などにより、新人は定時で帰る働き方を選び、練習時間を割かない傾向にあるようだ。その結果、スキルの高いベテランには指名が集中することになる。この傾向は既存店だけではなく、独立した新規店も同じで、新人が育たず辞めてしまう悪循環が透けて見える。

利益確保も大きな課題である。

SNSで集客し増益を確保するサロンもあるが、全体の3割は赤字だと言われていており、概ね利益確保は苦戦し、二極化の傾向にある。物価高による来店頻度の減少も大きな痛手である。集客のための割引クーポンの激化と広告費の負担、そこに人件費や資材費の高騰が加わる。

ではいま何が必要なのか。

値上げに見合う付加価値の提供(プレミアムサービス)や常連向けのプログラムを導入が増加しているが、根本的な人材不足を補うことは難しい。むしろ「どのように人を育て、働き方改善をはかるか」が問われていて、逆に言えば、そこに「お客様から選ばれる美容師」を育て上げるヒントがあるのではないだろうか。美容室が示す倒産増加の傾向は、サービス業全体が直面する未来図でもある。

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